今回は、TOEICと大学入試の英語、どちらが難しいのかというテーマでお話ししていきたいと思います。
そもそも別競技?比べるのが難しい理由
もちろん大学入試といっても難易度に幅があります。大学の数も多いので一概に比べるのは難しいんですが、正直なところ、これは「競技が違う」と言っていいと思います。
最近では共通テストなどでTOEICに少し近づいてきた部分もありますが、それでもやっぱり別物だと感じます。同じ英語ではあるので重なる部分もありますが、たとえるならテニスとバドミントン、ハンドボールと水球みたいなもの。似ているようで違いがはっきりあるんです。
難関大学合格者でもTOEICは難しい?
実際、大学入試で難関大学に合格した人、例えば早稲田や慶應に受かった人や、英検準1級を持っている人が「TOEICなんて楽勝だろう」と思って受けて、思ったより点数が取れなかったというのは本当によくある話です。
コメント欄でもよく見かけます。「早稲田に受かったからTOEICもいけると思ったけど、結果は600点台でした」なんていう声は珍しくありません。
英語力があるはずなのにTOEICで点が取れない理由
大学入試とTOEICの英語を比較すると、内容的には大学入試の方が難しいはずです。それでもTOEICでは思うような点数が取れないことがよくあります。
実際、私自身も英米文学専攻の大学だったんですが、同級生には500点台の人がたくさんいました。逆に、ゼミの中には900点以上の猛者もゴロゴロいました。つまり、やっぱり競技が違うんです。
出題される場面の違いがカギ
まず大きく違うのは、出てくる場面です。大学入試では学術的な内容が多く出題されますが、TOEICでは日常生活やビジネスシーンで使われる英語が中心です。
リスニングでは「場面を思い浮かべられるか」が非常に重要になります。大学入試の英語に慣れている人がTOEICの問題を解こうとすると、場面がイメージできず「何の話だこれ?」となってしまいます。逆もまたしかりで、TOEICの英語に慣れている人が大学入試の問題を解こうとしても、場面が浮かばず苦戦するわけです。
単語の違いが理解を妨げる
出題される場面が違えば、当然使われる単語も違います。たとえば、大学入試では難解な単語や文語的な表現が多く登場します。一方で、TOEICではビジネス英語や日常会話で使われる語彙が中心です。
難関大を目指して勉強した人が「単語はたくさん覚えた」と自信を持っていても、TOEICの問題に出てくる単語に「えっ、こんなの知らない」と戸惑うことがよくあります。
共通の単語でも文脈が違うと難易度が変わる
たとえば、TOEICでは「be being installed(設置中)」といった表現が普通に出てきますが、大学入試では見かけません。同じ単語でも使われ方が違うため、出てきたときにピンと来ないんですね。
もちろん、どちらの試験でも重要な単語や頻出語彙はあります。たとえば「feature(特徴)」「represent(代表する)」などは両方に出てきます。ただし、その使用文脈がまったく違うため、同じ単語でも難易度が変わることがあるんです。
文法問題にも違いがある
文法に関しても違いは明確です。大学入試では仮定法や倒置、関係詞など、文法全体を深く理解していないと解けないようなマニアックな問題も出題されます。
一方で、TOEICでは動詞の選択問題や語彙、前置詞の使い方など、より実用的な問題が中心です。形式が違うため、大学入試に慣れている人でもTOEICの文法問題では思わぬ落とし穴にハマることがあります。
TOEIC特有の表現に戸惑う受験経験者たち
TOEICでは、日常でよく使われるが大学入試ではあまり見かけない表現が頻出します。たとえば「sprained my ankle(足首を捻挫した)」や「muscle soreness(筋肉痛)」など。
これらは日常表現としては当たり前ですが、大学入試ではあまり取り上げられません。中には「alive to(敏感である)」のように、日本の辞書には載っていないようなネイティブのリアルな表現も、TOEICでは出題されることがあります。
TOEICと大学入試英語の違いと、その対応力について
前々回だったかな、僕はその回は受けてなかったんですけど、「フォームでもそういうのがありましたよ」という話がありました。辞書を引いても載っていないような表現なのに、ネイティブに聞くとみんなちゃんと答えられる、みたいなことってあるんです。つまり、ネイティブが普通に使う表現だけど、英和辞典には載っていない──そういった表現がTOEICでは出てきたりします。
なので、文法の部分に関しては、日本の大学入試よりも幅広く出題される傾向があります。ただ、大学入試では出てこないような表現が、TOEICでは若干出る、という感じです。
そして次にくるのが、「情報処理問題」ですね。これは、単に何が書いてあるかを読み取るだけでは解けません。大学入試までのやり方で、精読して「この文の答えはこれかな」とやっても、TOEICでは通用しないんです。
TOEICっていうのは、書かれている情報をもとに「じゃあ、こういうことが言えるよね?」という推測を求められる問題が重要なんですよ。だから、「書いてないじゃん!」ってなることもある。でも、それが正解だったりするんです。
大学入試的な発想で勉強してきた人が、TOEICを初めて受けたとき、「ああ、これ大学入試だったら文句出るだろうな。答えないじゃん!」って思う。でも、TOEIC的にはそれが正解。こういったタイプの問題は、毎回必ず出てきます。
これは、大学入試の英語までしっかり勉強してきた人でも解けないことがあります。「えっ、これが答えなの?」と戸惑ってしまうことがあるんです。だから、共通テストが今後もっと難しくなって、受験生たちが解き方を理解してきたら、こういったタイプの問題がどんどん増えてくるんじゃないかと、僕は思ってます。
ただ、こういう問題は文句が出やすいんですよね。「文句が出ないようにしよう」となると、問題として採用されにくい。でも、出題者が「文句を言わせないように問題を作る」ことができれば、可能性はあります。
とはいえ、大学入試ではやはり問題になりやすいので、もしかしたらこのタイプの問題は、総合問題化しないまま共通テストが進んでいくかもしれません。
情報の照らし合わせが求められるTOEIC
それに続いて、「情報の照らし合わせ」が必要な問題も、共通テストでも増えてきています。複数の箇所の情報を照らし合わせて答えを導くという形式で、TOEICでは非常に多く出題されます。リーディング問題では特によく出ますし、リスニングでも多少出題されます。たとえば、グラフを使った問題などですね。
こういう問題は慣れが必要です。ただまっすぐ文章を読んでも、答えは見つかりません。1か所だけで答えが出るのではなく、離れた場所に答えのヒントがある。だから、それを照らし合わせて答えを導くという考え方が必要なんです。
これを理解していないと、ただ文章を順に読んで終わってしまいます。そうではなく、「設問を見て、答えに関する情報を探しに行く」という意識が必要になります。
英語が本当に得意な人であれば、全文を通して読んで答えを見つけることも可能かもしれません。でも、そんな時間はTOEICではありません。だからこそ、「答えに関係ある部分」を絞って読む必要があります。
大学入試とTOEICは別の競技種目
実際、入試問題でもそうですが、うちのチャンネルに出てくれている人の中には、明治大学の問題は解けるけど、「共通テストやTOEICは無理です」と言っている人がいます。そう、やっぱり「別のスポーツ」「別の競技種目」なんですよね。
TOEICをやっている自分からすると、「共通テストなんて大したことない」と思ったりします。ただし、問題によってはTOEICでは出てこない計算問題などがあって、共通テストのほうが難しい部分もあります。
でも、全体的にはTOEICのほうが圧倒的に優しいです。これは当然といえば当然で、たとえば大学入試ではライティング(英作文)が出ることがありますが、TOEICではライティングは出ません。
また、TOEICには「リスニング」がありますが、これは大学によっては出ないこともあります。一方で、東京外国語大学や東京大学、一橋大学など、リスニングが出る大学を受験する人たちは、TOEICも取り組みやすい傾向があります。英語を「聞くこと」に慣れているからです。
TOEIC独自のルールと戦い方
ただし、TOEICにはTOEICならではのルールがあります。大学入試では問題用紙に書き込んでもOKですが、TOEICでは問題用紙に一切書き込んではいけません。これが「書き込み禁止」ですね。
つまり、頭の中だけで情報を処理しなければいけない。また、大学入試では問題文が2回読まれるところが多いのに対して、TOEICでは1回しか読まれません。このように、ルールがまったく異なるわけです。
文章の難しさで言えば、やはり難関私大(早慶)や難関国公立のほうが圧倒的に難しいです。表現や文法も大学入試のほうが難解です。ただ、求められるスキルが異なるんです。
だから、「大学入試でしっかり勉強してきた人がTOEICを解けるか?」というと、必ずしもそうではありません。
TOEIC用の勉強をすべき理由
つまり、大学に入ったら、TOEIC用の勉強をする必要があるということです。今でもTOEICの会場に行くと、大学入試用の単語帳や『パス単』を読んでいる人が結構います。でも、それは違うんですよ。
必要なのは、「TOEIC用の勉強」「TOEICの解き方」「TOEICで出る表現」「TOEICで出る場面を理解すること」です。
これがちゃんとできた人にとっては、大学入試のほうが圧倒的に難しいです。ただし、大学入試までしか勉強してこなかった人にとっては、TOEICもすごく難しく感じてしまう──これが現状なんです。
僕自身からすれば、大学入試のほうが圧倒的に難しいです。特に難関大の問題は手ごわいです。でも、大学入試だけを勉強してきた人にとっては、TOEICもやはり難しく感じるんですよね。リスニングもありますし、表現や解き方の慣れも必要ですから。
だからこそ、TOEICを受けるなら、TOEIC用の勉強をきちんとやってください。